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FEATURE

ベトナムで話題を呼ぶ、ピザレストラン「Pizza 4P’s」は、ドラマチックな内装とベトナムにはこれまでなかったチーズの自家生産など、飲食の枠に囚われない活躍ぶり。その大きな影響力は海外のメディアからの注目度も高い。これからスタートする一風堂ベトナムは、その「Pizza 4P’s」がてがけるとあって、一風堂に新風を吹き込む展開に期待が集まっている。

益子 陽介 Yosuke Masuko


大学卒業後は商社に入社。サイバーエージェントへ転職し、同社投資育成事業部べトナム代表として赴任。2010年にサイバーエージェントを退社し、2011年「Pizza 4P’s」を創業。現在、ベトナムではハノイ、ホーチミン、ダナンで10店舗を展開。飲食だけでなく、ベトナム産フレッシュチーズを生産、卸し、販売している。2019年一風堂ベトナムの開店を手掛けるほか、2022年海外市場上場に向けて事業を拡大中。
https://pizza4ps.com

木村 知昭 Tomoaki Kimura
力の源ホールディングス 広報チーム チームリーダー


新卒で山崎製パンに入社。店頭公開直後のワタミフードサービス(現ワタミ)に転職。3年間の店舗勤務後、社長室、広報、CSR、販促などの担当を経てブランド管理部長に就任。その後、カルチュアコンビニエンスクラブにて、社長室で広報を担当後、独立。2009年ソーシャルエナジーを創業し、障害者の就労支援、学習塾、起業や広報等のコンサルティング等を手がけ、2011年開催の世田谷ソーシャルビジネスコンテストでは初代大賞を獲得。同社の事業を社員に任せ、2014年より力の源の広報活動に関わる。

飯島 崇 Takashi Iijima
渡辺製麺 取締役副社長


ワイズテーブルコーポレーションにて、日本にナポリPIZZAを根付かせたPIZZA SALVATORE CUOMO事業の創業期から関わり、経営陣の一人としてフランチャイズ化・全国展開・海外進出を牽引。2014年、力の源グループに入社。国内の新規出店、外部企業への法人暖簾分け等を推進後、ホールディングスにて各グループ会社の事業連携や外部企業とのアライアンス、海外パートナーとの提携を実施。現在は渡辺製麺にてB2B事業の拡大、PB商品の企画開発、暖簾分け店舗の新規開拓等を担当。

ファシリテーター
関口 照輝 Teruki Sekiguchi
力の源ホールディングス人財戦略本部

 

Pizza 4P’sがてがければ
きっと新しい一風堂に出会える

関口ベトナムへ仕事などで行く人でPizza 4P’s(ピザフォーピース)を知らない人はいないというくらいに、すごく有名ですよね。ベトナム国内だけでなく、「NY TIMES」で取り上げられたり、 世界のベストレストラン50にも選ばれたりしています。

飯島 まだ外食リテラシーが成長段階のベトナムで、空間、品質、現地のスタッフのサービスも含めて、Pizza 4P’sはすべてのレベルが非常に高いと思います。店舗も2階建て、大きいところは3階建てで中央部分は吹き抜け、ちょっと階段を下ると全然違う空間が広がるというダイナミックな店作りも素晴らしいですね。

益子 Pizza 4P’sのコンセプトは気軽に入れるけれど、少し特別感があることです。ピザ窯を囲んで、作っているところを見て、一体感が生まれることを意識した店造りをしています。

関口かがり火のまわりに人が集まるみたいなことですね。ベトナムで多層フロアというのも、創業開店当時はなかったんじゃないですか?

益子 吹き抜けというのはあまりないですね。吹き抜けは席数が減るから勿体ないですし。

飯島 私も十数年前に、西麻布にある「権八」を初めて見た時の衝撃と同じくらいびっくりしました。我々には絶対できないですよ、借りたビルで2フロアも穴を空けちゃうって。あのダイナミックさは凄い。

益子 お願いしている建築家がヴォ・チョン・ギア・アーキテクツという、海外で活躍している事務所出身の日本人建築家の丹羽さんという方なのですが、レストランという建築としてあんまり成り立ちにくいものを、どう建築として成り立たせるかということになると、あれぐらい大きく構造から変えないとできないっていうのもあるんですよね。僕らも泣く泣く「わかりました」と(笑)。吹き抜けにすることでライセンスも大変だし、ビジネスとして考えると不合理ですが、そこが付加価値として強みになっていけばと考えていますね。

Pizza 4P’s Hai Ba Trung店(ホーチミン)

関口今度は一風堂ベトナムの出店にも協力いただくことになりましたが、そのきっかけは木村さんだったんですよね?

益子 実は木村さんとは前職からの知り合いで、お店を作るときにも相談に乗ってもらっていました。それが今に繋がっていると思います。

木村益子さんと出会った時は、外食から始まった上場企業の広報や販売促進の部署にいましたが、介護事業を買収したばかりで、介護事業の広告宣伝も自分が兼任してました。そこに毎月のように、仕事もないのに通ってくる人がいたんですよ。こんなネットでのマーケティング情報ありますよとか言って、それが益子さんだったの。

益子 木村さんが在籍してた企業が個人的に好きだったのもありますが、木村さんとお会いして、熊のようなオーラに魅了されてしまってですね、会いにいってました(笑)。

関口それは何年前のことですか?

木村2003年ぐらい、15年前ですね。その頃からお付き合いがあって、でもしばらく連絡がなかったんですが、その後起業するという連絡が来たんですよ。

益子 僕はまったく飲食業界には知り合いがいなくて、ぐるりと見回して一人だけいたのが木村さんだったんです。だから木村さんを頼って相談しようと。

木村その話は後でしますが、そこから時は流れて、力の源が「7つの習慣」の外食向けの研修事業を始めることになって、第一回セミナーをやることになったときに、益子さんから連絡がきたんです。ベトナムで社員向けに「7つの習慣」を教えているが上手くいかないっていう。それで力の源の「7つの習慣」の担当者に引き合わせて、何人かの幹部の方に受けていただいたんですよ。その頃、同じタイミングで一風堂のベトナム出店に向けてのリサーチが始まっていたんですよね。

飯島 そうなんです。ベトナムに進出を検討することになって、弊社の代表の清宮と数人でベトナムのマーケットを見て回っている時に、現地にいる友人から一番流行っているレストランとして紹介されたのがPizza 4P’sでした。ピッツァもパスタも美味しくて感動しました。しかもちょうど店で食事中に木村さんから連絡があったんです。

木村すごいタイミングだったよね。益子さんから「7つの習慣」のセミナーを受けさせてくださいっていう連絡がきたよっていうメッセージを送ったら、Pizza 4P’sにいたという。

飯島 そうそう、で、あれ? ここの店そうじゃない? となったのが、もしかしたら力の源とPizza 4P’sの最初の接点だったかもしれないですね。

木村そこで、実は私もその店には少し関わったと言ったら清宮も驚いていて、そこをやっている人と一緒にできたらいいよねって話したのが約2年前です。清宮とは大学時代から25年の付き合いですし、益子さんとも15年、この人たちに一緒にビジネスをしてもらうのは面白いなあと思っていました。

飯島 ベトナムに行ったのが2015年、益子さんに初めてお会いしたのが2016年10月です。ベトナム出店の話は別のパートナー候補と話しが進みかけていましたが、益子さんに「ベトナムは色々大変だから、施工管理とか、採用とか、内側の人間としてお手伝いしましょうか」とご提案いただいたんですよね。

その後も、ベトナムのいろんな外食オペレーターと会って、外食マーケットのことを聞いたり、パートナーとして組める相手かどうかのミーティングを重ねていました。そのさなかにも定期的に益子さんと連絡を取っていて、急速にお互いのお店のこととか、スタッフのこととか、業態のことをより身近に感じるようになっていったんです。この人たちと一風堂を作ったら、新しい一風堂の姿が見えるんじゃないかという直観がありました。

益子 最初はまさか我々がやると思っていなかった。もちろん会社は存じ上げていて、海外でラーメンを新しいカタチで広げていることも魅力的だなあと思っていました。当社のGMからは、御社の会長である河原さんの講義に衝撃を受けたという話を聞いていたのでずっと頭にはあったんです。河原さんの動画を見たり、本を読んだりして感銘を受けた部分も大きかったし。

そこで一風堂さんがベトナムでやると聞いて、ベトナムでラーメンを成功させるのはすごくハードルが高いし、僕が知る限りベトナムにはまだそこまでの外食オペレーター(パートナー企業)はいないんじゃないかなと。じゃあ誰がやるのが一番いいかと考えたら、我々がやるのが一風堂さんの価値を最大限に出せるんじゃないかという結論に達して。それまではそんなこと考えてもいなかったのですが、話し始めたらどんどん進んでいきましたね。

 
 

90年代にラーメン博物館の一風堂に
衝撃を受けて以来のファンです

関口もともと益子さんは、大変ありがたいことに、一風堂のファン歴が長いと聞いています。

益子 1994年頃は東京でラーメンを食べ歩いていて、一番衝撃を受けたのが新横浜のラーメン博物館の一風堂だったんです。そこから恵比寿店に通い始めて。ラーメンだけじゃなくて、「変わらないために変わり続ける」という企業のビジョンに共感したところもあります。我々が持っている「Delivering Wow, Sharing Happiness」というビジョンは感動してもらうことがテーマですが、感動してもらうには、毎回お客様の期待値を超える必要があり、それには進化しなくちゃいけない。メッセージ性としてシンクロするところがあったんです。「日本の食文化を世界へ」というところも、とても共感して、今回ご協力させてもらうことになりました。

関口先ほど少し出ましたが、木村さんはPizza 4P’sにどうかかわったんですか?

木村 益子さんが起業するときに相談を受けて、手元にあった、業態を作るときのシートを渡したんです。 これ埋めて来てくださいって。 ここに当時の原本を持ってきました。すごいびっちり書かれているでしょう。だいたいみなさん途中まででしか書けないんですよ。細かいところが決まっていないので。
益子さんにこの紙を渡したら、全部びっちり埋めて来た。そんな人は初めてでした。ここまで書けるんだったら大丈夫でしょうと、これを設計の人なり何なりに渡していけば共通認識になるのでと言いました。

益子 懐かしいなあ。でも今、この通りになっています。このシートを実はずっと使わせてもらっていて、今回の一風堂ベトナムさんでも作りましたよ。

関口本当にびっしり書いてありますが、簡単に書けたんですか?

益子 そうとう時間かけて書いたと思います。事業のパートナーでもある妻と話しながら、1ヶ月ぐらいかけました。Pizza 4P’sのターゲットは中間富裕層のベトナム人で、外国に行った経験があって月収は1,000ドルぐらいもらっている人。どっちかというと高級ブランド品を買うよりも、心の豊かさみたいなものを求めている人たち。そういう人たちをターゲットにしたいと言って、木村さんにご承諾いただいたのを覚えてます。

 
 

ピザ窯を囲んで人が繋がっていくというのが出発点
そういう店を作りたかった

関口そもそもピザを選んだのは何か理由があったのですか?

益子 一言でいうと趣味だったんです。サイバーエージェントに勤めながら、庭にピザ窯を造って、生地から作ったピザを焼いて、友達を呼んでパーティを楽しんでいたんです。それがきっかけです。ピザ窯を囲んで人が繋がっていくというのが出発点なので、そういう店を作りたかったんです。

木村今では、牧場を運営したり、チーズを作ったり、飲食、製造、卸しと川上から川下までやっているんですよね?

益子 レストランはホーチミン、ハノイ、ダナンで10店舗やっています(2018年11月現在)。プラスして、レストラン・ホテル向けにチーズの卸しをしていますね。今は300か所ぐらいかな。あとはグルメストアみたいなところで、自社ブランドのチーズをパッケージで販売しています。

関口チーズは何種類ぐらい作っているのでしょうか?

益子 8種類ですね。モッツァレラ、リコッタ、マスカルポーネ、ブラータ、カマンベール、ラクレット、クリームチーズ、スカモルツァです。

木村ベトナムでいいピザ用のチーズが手に入らないというところがチーズ作りの原点ですか?

益子 そうなんです。ピザで大切なのが生地とチーズで、生地はみなさん当たり前のように自家製だから差別化するならチーズかなと思って。冷凍ではなくて、どうしてもフレッシュを使いたかったんです。当時はイタリアからの輸入が1週間に1回で全然フレッシュで使えない状況だったので、製造するしかないということで踏み切りました。

関口工房を作られたんですよね?

益子 それが面白いことに、農大生がたまたま歩いていたので、一緒にチーズを作ろうよと声をかけたんですよ(笑)。今はその子が製造責任者ですが、彼に最初に「チーズ作れる?」と聞いたら「作れません」って言われて途方にくれましたけれど(笑)。

そこで日本の有名なチーズ職人に手紙を書いて、ぜひ一緒に作ってもらえませんかとお願いしたら、当たり前ですが断られてしまって。仕方なくYoutubeで情報を集めたり、原付バイクでの牧場探しから始まって、牧場をノックして10ℓのミルクを買って、自宅のキッチンで夜中に試作を繰り返してたり、3か月くらいはかかりました。

関口すごい行動力ですね。ベトナムには牧場が多いんですか? それにブラータチーズってハードルが高いように思いますが?

益子 牧場は多くないですよ。ブッラータはちょっと難しいチーズですね。実は東京にある「SHIBUYA CHEESE STAND」の藤川さんにベトナムにも来てもらって、情報交換を行ったりしています。一風堂ベトナムでも「ブッラータチーズ冷ややっこ」という形で出しますよ。うちはイタリアンなので、たこ焼き風にしたラクレットのコロッケとかも考えています。

関口ベトナムは気温が高いからチーズ造りも難しい面がありそうですね。

益子 最初はホーチミンで始めたのですが、クオリティがよくないので、標高1,500メートル、平均気温15~20℃のダラットへ移ったんです。始めは農家さんに牛乳をお願いしていましたが、牛に裏庭のキャベツとか人参とか何でもあげちゃうんですよ(笑)。それだとミルクの風味が毎日変わっちゃうから、こちらで用意したものだけあげてと言ってもやってくれなくて。結局は自分たちで乳牛を飼ってミルクも手掛けることになりました。

関口チーズの品質ってどこが一番違うのでしょうか?

益子 いろいろあるけれど、たんぱく質、脂肪、風味っていうのがあって、一番は乳牛の餌と環境とDNAですかね。いろいろテストをしたので、僕は牛の餌には詳しいですよ(笑)。自社のカマンベールは2種類あって、本場フランス並みに濃厚なものが作れていますがそれは売れないんです。ベトナム人には、食べやすいあっさりタイプが人気です。

飯島 チーズ工房を見学させてもらいましたが、作る人たちも重要なファクターですよね。日本人は先ほどの農大生の彼がひとりで、あとは全員ベトナム人。チーズなんか作ったこともない人たちが手作りしているのに、技術や衛生環境、新商品を開発するモチベーションも、正直言って想像を遥かに超えるレベルでした。こんな田舎にポツンとある工房で、ほとんど素人同然のスタッフでやっているのに、こんなにクオリティの高い製造現場があるのかっていう。自分たちが日本でやっている製麺とかスープの工場も学ぶことがすごくたくさんあるなあと感動しました。

益子 チーズのホエーも産業廃棄物になってしまうので、バクテリアを入れて発酵させてから肥料にしてます。それでルッコラを育てていて、ルッコラとブラータチーズのサラダはうちのシグネチャーですね。そのルッコラを使ったサラダも、一風堂ベトナムで提供させていただきますよ。

 
 

お互いの会社のビジョンが似ていて
リスペクトしあえる関係

関口今回の一風堂ベトナムで、双方の目指すべきものやビジョンはありますか?

飯島 Pizza 4P’sとは、お互いの会社が持っている企業風土や企業ビジョンが似ていますし、お互いの商品をリスペクトしあえる。そういうことをひっくるめて、一風堂ブランドを育てていただきたいと思っています。一風堂という大切なブランドをお預けして、一緒に育てていただく里親のような存在だから、信頼関係を築くのはとても重要です。Pizza 4P’sだったら、一風堂を理解して、新しい一風堂の一面を見せてくれるんじゃないかという期待感がすごく大きいです。

益子 我々はまだ8年そこそこの会社で、御社は33年ですから、逆に学ばせてもらうことの方が多いです。当たり前ですけれど、一風堂というブランドをきちんと守るということと、さらに新しい価値を少しでも提供できればとは考えています。僕たちが提供できるものを少しでも役に立って新しい形ができたらうれしいです。

関口世界的にはラーメンブームと言われていますが、ベトナムでのラーメンの可能性はどうなのでしょうか?

益子 僕の見解では、まだベトナムではラーメンは浸透していないですね。日系のラーメンがいくつか進出していますが、ベトナム人のお客様がちゃんと通われているところはまだない。ベトナムは麺の国だから、麺に対するリテラシーが高いです。それに文化として麺は朝に食べる習慣があります。価格も150円とか200円ぐらいがスタンダードなので、少なくともその2~3倍以上の値付けになるだろうと想定している一風堂のラーメンは、正直一筋縄ではいかないという思いはあります。

飯島 新しいチャレンジにはなりますよね。他のアジア諸国だとだいたい客単価が1,000円前後にしていますが、今回はベトナムの中間マーケット層が日常的に使いやすいところで勝負を考えてます。国民全体に受け入れてもらうためにかなりとっつきやすい価格で提供します。

益子 多くの日系のレストランがベトナムにきて失敗していますが、失敗例として一番多いのは、ターゲットを日本人にしてプライスを上げてしまうことです。プライシングは相当重要で、Pizza 4P’sのネットのレビューを見てみると、外国人は価格に関してそれほど書きませんが、ベトナム人のレビューでは、このメニューはこの金額だったらお得であるなど、詳細に書いてあります。
もちろんある程度、価格を高くして一部の人に受け入れられることはできますが、僕たちはそこを狙いたくないんです。ベトナム人にベトナムのブランドとして認識してもらって、愛されるブランドを作りたいんです。

関口一風堂がベトナムという国を選んだ理由を飯島さんから話してもらえますか?

飯島 実際に行ってみて、国、街、人に凄くエネルギーがあったというのがひとつ。和食や日系のレストランが進出はするんだけれど、出ては消えで本当に地元の人たちが根付いているお店がまだ見受けられなかったので、コンペティター(競合者)が少ないというのもあります。あとは国民の平均年齢が28歳と若く(日本は46歳)、人口統計的に見ても明らかに、これから経済が伸びていくというのが肌で感じられましたね。

関口最初はホーチミンからですよね?

飯島 はい、ホーチミンです。7区フーミーフン地区のMAIA CLUB(マイアクラブ)という場所で、プール、テニスコート、レストランなどが入った複合施設の中に出店し、坪数が174坪、席数が約120席の大型店舗です。そのエリアは、近年、高級住宅地としての開拓が進んでおり、今後の高級エリアとしてのポテンシャルが高く、現在注目されているエリアの1つです。メニューの特徴としては、Pizza 4P’s Phu My Hung店で作られる自家製麺を使用したり、自家製チーズ・オーガニック食材を使用したサイドメニューも充実しています。

2019年3月上旬にグランドオープン予定

関口ハノイとホーチミンでは全然違うのでしょうか?

益子 全然違いますね。ホーチミンの方が発展性もあるし、許容性もあります。なので、まずはホーチミンから始めて、その後ハノイへの出店という流れがいいと思っています。

 
 

海外での飲食業は
大きな可能性を秘めたビジネス

関口益子さんは海外で働きたいと学生時代から考えていたんですか?

益子 僕が海外に興味を持ったのは、高校時代にラグビーをやっていて、遠征でニュージーランドとオーストラリアに行ったのがきっかけです。そのとき100対0ぐらいで負けて、なんて恥ずかしいんだろうって思いがあって。それがきっかけで、大学の時にオーストラリアで1年間ラグビー留学をしたんですが、そこでもズタボロにやられたので、もうラグビーとはおさらばって感じでした(笑)。

でも外を知るってやっぱり若いうちが有意義なんじゃないかなと思っています。若いうちに実際に生活してみるというのはいいですよ。それ以来ずっと海外を意識してて、ビジネスでも海外で戦ってみたいという意識がずっとありました。最初は海外に行くために商社に入って、サイバーエージェントに入るときも、「後々は海外にいきたいです」と言ったほどでした。

関口日本の若者が、ベトナムで働くことは推奨されますか? 益子さんから見てどうでしょうか。

益子 そうですね。まず親日なので、日本人が住みやすいですよ。ODA(政府開発援助)は去年まで日本が一位だったので、ベトナム人には日本への親近感があるし、去年からは試験的にですが、小学校の義務教育で日本語の勉強が始まりました。人口約9,000万人、平均年齢28歳(2017年)というマーケットは、非常にこの先いいでしょうね。あとは治安の良さもある。街中を女性が一人で歩ける国はそんなに多くはないのかなあと。

関口私は採用活動を通して、日々学生に会うことが多いのですが、特に海外に留学経験のある学生には、一風堂の海外展開を間近で見てくれていたりするので、グローバルに戦っている飲食ビジネスって面白そうだな、日本と海外の架け橋となるような仕事ができそうだなという興味を持ってくれるんです。
益子さんも商社やIT企業を経て、飲食ビジネスをされてますけれど、飲食ビジネスの面白さをぜひ学生に伝えてもらえませんか?

益子 たくさんあって、ひとつは食に関わる職業ですね。食べることは生きる根幹ですから、それをビジネスにできるのは魅力です。だって1日3回も勉強になるわけですし。もうひとつは目の前にお客さんがいることが大きいと思います。それが飲食店の最大の魅力ですね。前職の時は最終的な人の笑顔が見えづらかったので、何のために仕事をしているのかわからなくなってしまうこともあったのですが、今はそれがすごくわかりやすい形で入ってくるので非常に気持ちが良いです。関口さんがおっしゃるように、海外では飲食もビジネスとしての認識も強いですよね。

これから会社を選ぶ学生さんに言いたいのは、学生のうちに本当にやりたいことを見つけるのは難しいということ。この歳になってもわからない人が多い中で、じゃあどうするかというと、せめてビジョンに共感できる会社を選ぶことが重要じゃないかと思います。入社しても何をやらせてもらえるかは、実はわからないわけだし、思ったことをやれるかも実は確実ではなかったりするので。

学生の時は会社のビジョンを見るよりも、どちらかというと職種や条件面を重視しがちですが、経営側からすると、ビジョンや理念はすごく大切。根幹なのでそこは変わらないから、きちんと見た方がいいんじゃないかと思います。

木村飯島さんはPizza 4P’sの人材の豊かさについてどう思っていますか?

飯島 ポイントは2つあると思います。ひとつは奥様の存在で、先ほどお二人でコンセプトシートを書いたという話があったけれど、奥様ももともと外食は未経験だったそうです。でも、お店に毎日行って、お客様やスタッフに接するのを目の当たりにしたし、ビジネスのときは夫婦というより、パートナーというか、仲間として議論をしているのを何度も見ているので、そこはすごく大きい存在だと感じました。

もうひとつは、主要部門の幹部にいる日本人の方々で、彼らはひとり一部門というか、各部署に日本人がひとりいて後は全員ベトナム人なんですよね。日本人はどうしても固まりがちですけれど、Pizza 4P’sでは一人一人が独立して責任をもってチームを作っているという印象です。

益子 ありがとうございます。逆に僕からすると、これだけいろんな人材が集まっている力の源グループのほうがびっくりですよ(笑)。僕自身も受けさせていただきましたが、「7つの習慣」のセミナーをはじめ、社員の教育というところに力を入れているのも魅力的です。

まだぜんぜん自分の理想とする形にはできていないですが、Pizza 4P’sという名前は、平和のための「for peace」からきていて、「peace of mind」をみんなが持つようにしていけたらいいなという思いがあります。

僕は、今後IT化が進むと人間はどんどん時間ができる方向にいくと考えていて、結局は心の在り方みたいなものが一番の課題になるんじゃないかと思っていて、そこにコミットするのが僕らの会社としてできることかなと思っているんです。

飯島 益子さんは人材育成の勉強を欠かさずやっているし、そういう人に対する思いが、お店のローカルスタッフに伝わっていると感じます。海外だと、飲食経験がないアルバイトさんがマニュアルに沿ってメニューを出すのをよく見かけますし、それがサービスとしてまあまあ受け入れられるところですが、Pizza 4P’sでは、アルバイトさんが、すごく笑顔でお客さんに一生懸命接しようとするし、お皿が空いたらスッとさげたり、おしぼりが汚れていた何もいわなくても新しいものを持ってきてくれたりといった日本人らしい気遣いができているんですよね。日本だったら当たり前かも知れないですが、そのレベルを海外で実現できているのは、教育に対する思いが強いからだろうなあと思いました。

関口ちなみにPizza 4P’sは日本に進出する予定はあるんでしょうか?

益子 はい、2020年を予定して、そのプロジェクトがもう動いています。

関口なるほどそれは楽しみですね。他にも進出を考えている国はあるのでしょうか?

益子 インドですね。

飯島 それは既にプロジェクトが進んでいて、具体的にリサーチも終わっていると聞いています。

益子 はい。場所はバンガロールで、すでに担当者は住んでいます。本当は、今年出したかったのですが、いったん今年はベトナムに集中しようということになりました。インドはベトナムと同じように若い人口が多くて、パン文化があって、チーズ文化があって。Pizza 4P’sはイタリアンなので入りやすいかあと。あと水牛のチーズも作れるのもいいですね。

関口最後にPizza 4P’sがこれからの挑戦したいことを教えてください。

益子 一風堂みたいに、海外に日本の文化を伝えることや、影響力のある会社になりたいと思っています。少しでも世界をよくできるようになりたい。数字的な話をすると、2040年に世界の人口が100億人に達したときに、10億人に何か関われることを目指していて、そこでわが社の理念でもある「Make the World Smile for Peace」ができていれば、ある一定の貢献ができると考えています。

レストランはその一つの手段であると思っていて、その手段は変わっていくかもしれませんが、ビジョンとミッションをしっかりと守っていければいいと考えています。自分たちの強みを新しく発信しつつ、できることの第一歩として、ベトナムで一風堂をやらせていただくことになったんです。よろしくお願いいたします。

<Pizza 4P’s HP>
https://pizza4ps.com

<Pizza 4P’s 関連記事>
http://motokurashi.com/vietnum-pizza4ps/20171218
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-40269939

文=岡本ジュン/写真=なかむらしんたろう
※所属、役職はインタビュー当時のものです。