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デザインとは、アートと真逆にあるもの。“普通”が大切なキーワード

関口そもそも小梶さんは独立前はとある大手家電メーカーにいらしたんですよね? なぜその企業に入ろうと決めたんですか?

小梶僕は入社する前から3年後には独立するつもりでいたので、個人のデザイン事務所での勤務を経験した後、大きな企業でも働いて多くのことを学び、吸収したいと思っていたんです。その会社は当時全盛期でしたし、インハウスデザイナーの募集に300人のエントリーがあっても、入れるのは10人程と言う狭き門でした。企業側もしっかりと見極めて選考するために、1ヶ月間続く合宿面接まであったほどです。

僕はどうしてもその会社に入りたかったので、知恵を絞ってとにかく目立つことをしようと考えました。みんながリクルートスーツを着ている中で、僕は穴あきのデニムを履いて、面接にはライバルメーカーのパソコンを持って行ったんです(笑)。あえて怒られるようなことをして会話を生み出そうという作戦でしたが、案の定メチャクチャ怒られました。当たり前の話なんですが、それならそのライバルメーカーへ行けと言われたりしました。

でもそこで、なぜ僕がその他社製品を使いたいのか、なぜこのクラッシュデニムを履きたいのか、ということを説明する機会を貰えるじゃないですか。自分の思いをプレゼンできる場を強引に作ったという感じです。通常通りにやっていたら、上司の方とあんまり話す機会もないですよね。僕はそのコミュニケーションがとりたかったんです。

関口すごい発想ですね(笑)。

小梶最終面接の時は、最初から正直に「3年で会社を辞めて独立します」と宣言しました。独立を目的に、個人のデザイン事務所だけでは世の中の仕事の流れがわからないから御社に応募しました、みたいなことを偉そうに言いましたが、結果的には採用していただけました。そういう経緯だったので、入社してからはすごく楽でしたね。こういう奴なんだと理解されていたので、お陰で面白いプロジェクトを沢山任せてもらいました。

関口小梶さん自身は、ziginc.の社長として人を採用するときに重視することとか、ここを見るというのはありますか?

小梶沢山あります。語弊がないようにはお伝えしたいんですが、実はデザイン力はほとんど見ていないんです。デザインの仕事はアートとは真逆にあると思っていて、デザインはクライアントのメッセージをわかりやすく伝えるコミュニケーションツールをクライアントの代わりに作る作業だと思っているんです。

アートは、個人の特徴とか、インパクトがあるもの、世界にひとつだけのものが理想だけれど、デザインは普通の人の感覚がないとダメです。だから奇抜でいかにもアーティスト風の「自分が作りたいデザインはこういうものです」と強く提案してくる人は、うちでは難しいと思っています。

それよりも、しっかり挨拶ができるとか、日本的な礼儀を重んじているとか、感じがいいとか、クセが少ないとか、そういう性格的な部分が大切だと思っています。なぜなら僕らはクライアントワークが多いので、取引先と良い人間関係を築けていないと、通るプレゼンもスムーズに通らない。そういう意味では人間性の高さが一番重要かもしれませんね。センス的なものはziginc.に入社してから、いろんな人と出会ったりする中である程度は伸びると考えています。それよりも “人に好かれること”は“人が好むデザインがわかること”に繋がるので、この要素をとても大切にしています。

関口岡さんは、どういったことがきっかけでziginc.に来られたんですか?

小梶僕が直接ヘッドハンティングしたんです。出張で博多に行ったときに、知人からすごく優秀な子がいるよって聞いていたので、どうしてもすぐに会いたいと連絡をとって。今考えるとすごく強引だけど(笑)。彼女は唯一、履歴書を出してない社員です。

 私は山口県出身なんですが、当時は福岡にいて、そこでいろんな人に会う機会が多かったので、その繋がりで小梶を紹介してもらったんです。当時は東京に出たいという気持ちもあったし、ホームページを見たり、他の人に話を聞いたりすると、ziginc.はいい意味で堅苦しくなくとてもクリエイティブマインドな会社でいいなと思っていました。

小梶岡はファッションプレスやアパレルショップの店員さんみたいな雰囲気だったので、僕らがやりたいと思っていることをスムーズに理解してくれるだろうと直感的に感じたんです。実はデザイナーやウェブを作っている人って、自宅やパソコンの前で作業することが多いから意外と流行や洋服に無頓着な人が多いんですよ。でも、僕は人を惹きつけるビジュアルやデザインには流行を意識したファッションアプローチのある表現がとても重要だと思っているので、ziginc.には彼女のような人材が必要だと考えていました。

関口岡さんが仕事で心がけていることはどんなことですか?

 私のモットーは、“来たら打つ” です(笑)。
目の前に来たものを打ち返していたら、今ここにいるというか。

関口“来たら打つ”で今ここにたどりつけたというのは、まだ仕事で何をしたいのか分からずに迷っている学生たちにとっては、参考になる話ですね。

小梶まさに千本ノックというか、できる人に仕事は降ってくるから、岡は実際にものすごく仕事量が多いんです(笑)。でもそれを着実に打ち返しながら成長しているので、いろんな球を打ち返すことによって仕事の幅が広がっているように思います。

僕は女性の感覚や感度は、色々な意味で男性より鋭いと思っているんです。男性はどうしても理屈で物事を考えてしまうから堅くなりがちだけど、女性はもっと感覚的でしょう。わかりやすい話で言うと、男性のスタイリストさんは洋服の裏地や縫製、ボタンを見るんですね。いわゆる洋服をモノとして見ているんです。でも女性のスタイリストさんは、その場で即決、この服カワイイ、これはダメという感じで洋服をモノとしてではなくストレートに洋服=ファッション(流行)と捉えているんです。ユーザーファーストな僕らの仕事にはこの感覚がとても重要で、男性スタッフが必死で頭をひねって考えて作ったものを女性に見せると「うーん…」、みたいなことが社内でもよくあります(笑)。男性だけの会議よりも、視点が根本的に違う女性が会議に参加することで、プロジェクトが良い方向へ進むことがとても多いんです。

岡知里(Chilli Oka)
ziginc. アートディレクター
高校卒業後に写真を学び、学生時代はカメラマンのアシスタントなどを経験。その後IT企業やデザインプロダクションにてキャリアを積む。福岡で働くうちに知人を通じて小梶氏と知り合い、2010年ziginc.入社。アートディレクションやウェブディレクションなど幅広く手掛けている。現在、力の源ホールディングスのコーポレートサイト、国内外の「一風堂」ウェブデザインを担当する。