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FEATURE

一風堂とPANDA EXPRESS、一見異なる業態でありながら、そこには両社が志向する企業の在り方、企業文化、仕事に対する考え方になどに共通する価値観が根底にありました。
当社との合弁会社I&PRunwayJAPANを設立し、PANDA EXPRESSを日本に再出店して一年。Panda Restaurant Group(以下PRG社) の人気を支える人財育成の秘密を知るべくインタビューをお願いしましたが、話は、Andrew Cherng会長(以下、AC)の人生観・仕事観からPRG社の成長の秘密が垣間見える内容となりました。

星崎今日は素晴らしい機会をいただきありがとうございます。
今回お時間頂いたのは、私自身、豊かな人生を送るには、まず豊かな人間関係からだと思っており、その基礎を学べるのが飲食ビジネスの魅力だと強く感じています。
そしてまさにそれを、先駆けて会社の中の仕組みに落とし込んで体現されているのが、PRG社であると思っています。

そこで、実際にAndrew会長がどのような想いでこの取組などを実施されているのか、どういう背景があったのかを聞いてみたかったのです。
ですので、今日この日をとても楽しみにしていました。

AC私もです。よろしくお願いします。

星崎私たち人事チームを中心に、力の源グループを‘’もっとエネルギッシュに‘’、そして、‘’もっと”ヒト“から選ばれる企業にしよう‘’という2つのテーマに取り組んでいます。

ACそれは、非常に大きなビジョンですね。

星崎はい。大きなビジョンだと思っています。

昨日LAに到着して、PRG社のサポートセンター(本社)近くのPANDA EXPRESSの店舗に訪問させて頂きました。PANDA EXPRESSの店舗はとても綺麗で驚きました。圧倒的に店内、特に厨房が綺麗だったことに、すごく感銘を受けました。2,000店舗もあるお店が本当にピカピカにされているのであろうと感じ、それが衝撃的でした。

ACお店をきれいに維持するのは、店舗スタッフの力だけではなく、会社全体で取り組む必要があります。店舗設計時にデザインや、スペースの大きさ、清潔にしやすいようになど、最初からシンプルに組み立てることが重要です。そういう意味でもうちのお店は本当に綺麗に、清潔を第一に、どこに行ってもそれはできていると思っています。

昨日行かれたお店は、週の売り上げが6万米ドル近いお店です。ですから年間では300万米ドル近いです。

星崎日本円で約3億円ですか、凄いですね。あと、驚いたのが、従業員同士が私語をしないということです。自分の仕事だけに集中しているんです。もちろん、お客様との会話はちゃんと楽しんでいる中で、無駄なおしゃべりというものがないんです。

AC本社の近くにあるお店なので、模範となる様により高い基準で運営されている必要があります。また近くには大きな軍の基地があり、その基地の中にもPANDA EXPRESSを出店しているんですよ。

星崎基地の中にもですか。本当に国民に愛されているブランドなんですね。

Andrew Cherng(アンドリュー・チャーン)
Panda Restaurant Group,Inc.創設者/共同会長兼最高経営責任者


1973年、父親と共に、カリフォルニア州パサデナにPanda Inn1号店を出店。
2007年には、同社を年間売上高1億ドルまで成長させ、従業員数も1万3千人を超えた。
2008年、妻のPeggy Cherngと共にLAX沿岸商工会議所(the LAX Coastal Area Chamber of Commerce)からロサンゼルス市賞を受賞。また、全国レストラン協会での殿堂入りや、Forbes誌からも経営手腕について高い評価を得ている。

Panda Restarurant Group,Inc.について
1973年、チャイニーズレストラン「Panda Inn」の1号店をカリフォルニアに出店し創業。
その後、ファストカジュアル業態の「PANDA EXPRESS」を1983年に出店。現在「PANDA EXPRESS」は店舗数1,900店を超え、チャイニーズレストランチェーンとしては全米店舗数1位に成長。現在、グループ総店舗数2,000店を超えるレストラングループを形成しています。

会社名:Panda Restaurant Group,Inc.
本社所在地:米国カリフォルニア州(デラウェア州法人)
設立年月:1973年5月
代表者:Andrew Cherng(Founder and Chairman of the Board)

PANDAEXPRESSは効率を突き詰めたシンプルな業務が中心。
だからこそ、ディテールに拘り、スタッフの成熟に応える人事制度がある。

星崎これだけ店舗展開されている中で、Andrew会長がお店で一番見られるポイント、店舗運営に求めるポイントっていうのはどんなところがありますか?

ACお店は、細かいことをしっかりとやらなければいけません。それができれば、だいたい大きい問題というのは起こらないんです。そして、やっぱり、仕事は、きちんと、手際よくやってくれる人が良い。そういう面では、人財を育てることは厳しくやる必要があるかもしれません。

星崎なるほど。厳しくですか。手際のところでいうと、仕事の型というか、マニュアル等をどこまで整備するかという観点と、本人が状況に合わせてどこまで柔軟に対応できるのかという、このバランスが重要だと思いますが、いかがでしょうか。

AC基準を高くし続けることはできますよね。ただし、店舗運営で難しいのは、例えば、10年20年経っても同じ仕事をやっていて、成長していない人がいるということがある。ただし、ちゃんと成長の機会があって、自分の役割が明確にあれば、基本的に人は成長していきます。

星崎機会と、役割が人を成長させると。

ACそうです。

星崎成長については、PRG社の中でも本当に大切にしているキーワードですよね。実際に御社の経営計画(2020Vision)においても、人財育成の分野でワールドクラスの企業になるとうたっていますね。

話は少し飛びますが、昨日お店を見た時に、お店がとてもシンプルでありながら、機能も意識しているといいますか。

AC商売は工夫次第でコストを安く抑えられるんですね。例えば店舗開発、厨房をどうするのか、ホール設計をどうするのか、シンプルに機能を設計し、出来る限り安く出店する必要があります。それができれば、人件費やその他のコストも結果的に抑えることができます。コストを抑えることにより、多くの利益を得て、それを役割に見合った形で分配する、そうするとみんなが豊かになることができる。商売というのは、そういう事が出来るんですね。ただ、今までやってきて思うのは、商売というのは売上・利益だけではないんですよね。

PANDA EXPRESSでも、長い時間働いてくれた人が人間としてもプロとしても成長してくれることを大切に考えています。それともう一つ、高い給与を得てもらうこと、つまり金銭的にも豊かになることが大切だと考えています。

給与が増え、より良い生活を実現することは、この会社でのテーマですね。

星崎より豊かな生活ですね。

ACそうです。心配する必要がないぐらい豊かでないとダメですよね。

アメリカのPANDA EXPRESSでは、2アイテムコンボが$7.2or3、 一風堂のラーメンは、$15,16。
昔、横浜に行ったときに、中華料理の一番安いラーメンが40円だったんですね。その時は、米ドルが一律360円の時代。だから、当時は11セントだったわけです。11セントから今では11ドルへ。物価はどんどん上昇してますから。

星崎100倍ですね。

ACそう、100倍以上です。大きな変化というのは常に生まれていきます。だから私が思うに、長く生き残るためにはいつでも費用(コスト)を考えなければいけません。

私たちはハイテク業界ではないから、まだラッキーです。例えば、コンピュータは、ますます安くしていかないといけないでしょう。

星崎そうですね。テクノロジーの進歩に…。

ACテクノロジーの進歩に遅れずについていくことは大変なことです。

だから長期的に考えて、商品を簡単に作り出すこと、多くの人に簡単に商品やサービスを提供する方法を考えることが重要になってくると思うんです。

星崎はい。その点で言うと、Andrew会長はどのようにコストダウンをみていらっしゃいますか。

AC売上が低いと、損にならないようにするには大変な努力が必要です。うちも、売上が落ちるとすごくやりにくいんです。常にフードを出しておかないといけない、多すぎると食べられないし、フレッシュなものを出さないといけない。でも、量が足りないとそれも問題になる。多すぎると…。

星崎ロスになりますよね。

ACそうです。また、アメリカでは、人件費が高くなりつつあり、また、賃貸料も大きな要因です。

例えば、私たちのJV(合弁事業)※において、サンフランシスコの一風堂は、旗艦店ですから、これらのコスト面もこれから詰めていかなくてはいけません。

※PRG社との合弁事業で、一風堂をサンフランシスコ市内にOPEN予定。