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FEATURE

飲食業を通過するすべての人が
素晴らしいビジネスパーソンになる時代へ

─これまで飲食業界ではあまりなかった試みですが、実際のところ現場の反応はどうでしょうか?

僕が見えているのは狭い範囲ですが、こういうプログラムをやるのに慣れていない業界だと思います。これは飲食人(笑)の特質でもあるのですが、そもそも独立志向があって、自分で店をやりたいと思っている人たちですから、なんでも自分でカスタマイズするという発想があって、すべてが我流になりがちなんです。

ただ、我流ってどこかで頭打ちになる。僕が見てきた中では、ある程度は我流でやってお店やチームを創れます。でも我流って、再現性が低いんですよね。

結果として、多くの人は一店舗の営業に労力を割くことになり、そこに留まって先のことを考えなくなります。これは飲食業においての人財が陥りがちな弱点と言えます。

『7つの習慣』は、そもそもチーム創りを体系化しているので、高い再現性を実現できます。これに加えて第7の習慣である「刃を研ぐ」という習慣がありますが、それは自分自身をメンテナンスしながらスパイラルアップさせることなんです。そこの仕組みがきちんと分かっていれば、自分が培ったチーム力だったり、コミュニケーション能力だったりをさらに発展させるために、今後どんなことをしたらいいのかという発想が持てるんです。

飲食人がはまりがちな“これで大丈夫”というところに留まらず、もっと発展するには、経営のことを本当に理解しているのかな、マーケティングを理解しているのかなという疑問を持つこと。豊かなコミュニケーション能力を持つ人が勉強をすることで、すごく良いビジネスパーソンになれるんです。ここに飲食業界の状況がコロンと変わる瞬間が来ると信じています。

一風堂では福岡の山王店を『7つの習慣』のモデル店舗にしていますが、そこのスタッフは、年代もバラバラで、障害を持たれている方や外国籍の方など、とにかく多様なんです。でもお互いの違いを尊重しながら、本当に気持ちの良い空気感を作れています。『7つの習慣』は多様性のあるチームを育むのに効果的ですね。

とくに飲食店は採用に課題を抱えていることが多いのですが、山王店は1年半以上も外部に採用をかけていないんですよ。辞める人も少ないし、スタッフの紹介で人が入ってきてくれるようになりました。今は4名の方が社員を希望されています。導入前は悲しいことに、ここで社員になりたいという方はいなかったのですけどね。効果は出ていると感じています。

飲食業の現状は、社員として働きたい職業としてはワーストのほうに入ります。ただ、アルバイトで働きたい職業ではベストに入ります。要するに、気軽さはありますが、いざ自分の職業にすると考えると、専門性を問われない職と思われがちで、これを一生の仕事にしていいのか、ということころで選ばれないんです。

ただ、すごく多くの人が飲食に携わることは間違いないので、そこに可能性を見出しています。飲食業を通過した人たちが『7つの習慣』をしっかり体系化して学べば、その後にいろんな分野へ進んで活躍できるはずです。引いては日本に対していいインパクトを与える人がたくさん出ると信じています。

─その変革までのタイムスパンはどのくらいだと思いますか?

タイムスパンはどんなに短くとも10年はかかると思います。ただ10年そういう人を輩出し続けたら、世の中がめちゃくちゃ変わりますよね。まだその手前しか見えていないですが。私は多くの人たちに、一番最初に働くべき業界は飲食業界であると考えてもらえるようにしていきたいんです。この業界に入ったら、その後の人生に必要な能力、つまり豊かな人間関係を築けるコミュニケーション能力とリーダーシップ能力が身に着けられる、それを確信して飲食業界へ人が入るという流れを作り出したいんです。

飲食業界に来る方々は、人を喜ばせたいという人がほとんどです。これはサービス業と言いかえてもいいですけど。単純に何のために仕事するかと聞けば、人に喜んでもらうためというスタンスを本質的に持っています。だから何を学んでもそのベクトルが人に向く。そんな人たちが多くを学んだ時には、世の中が良くなることしか想像できないでしょう(笑)。

力の源には『良い社会人、良い大人、良い人間を育てること』という志があって、そのために力の源という会社の箱があると認識しています。

─今後はどうなっていくと思いますか?

ありがたいことに2017年3月に、力の源ホールディングスは上場させていただきました。これまでよりいろんな期待が出てくる中で、人財教育もよりシビアに成果が問われる環境にあると思っています。人財教育というのは、“成果”と“成果を満たす能力”の二つに分けたとき、“成果を満たす能力”を高める方に寄りがちです。そこでより“成果”の方に意識を置く必要があると捉えています。

これからの社会環境でいえば、間違いなく飲食業界には人財難という課題があります。そこに対応するには、今まで飲食業をやっていなかった年配の方をどう受け入れていくか、今のマーケットの中でまだ稼働していない、というとおかしな言い方ですが、マーケットに参加していない主婦層の方にいかに働きやすい環境を整えていくのかが課題です。

そうしたこれからの人財がすぐに働ける環境を、『7つの習慣』というフレームを使ってどう実現するか、『7つの習慣』を使いながら、人財難に陥らない形を社内外で広げていこうというのが今後の展開として非常に見えやすい成果ではないでしょうか。

もっと直近でいえば、“人のために何かをする”ことが得意な飲食業界の人たちと『7つの習慣』の掛け合わせを一秒でも早く実現したいというのはありますよ、すごく!
人のために志を持ち、ビジネスセンスもあり、そして、豊かな人間関係も築ける、バリューの高い人が飲食業界にいっぱい出ますよ。見ていてください!

7つの習慣と一風堂、力の源ホールディングス関連書籍

撮影=原智彦、文=岡本ジュン
※所属、役職はインタビュー当時のものです。