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FEATURE

一風堂と安心安全な農産品や加工食品、ミールキットなどの食品宅配のオイシックスドット大地。ちょっと異色の取り合わせともいえるこの2社が共同でメニューを開発した。その商品とは、『野菜たっぷり豚骨スープ鍋』。必要量の食材とレシピがセットになったOisixのミールキット()「Kit Oisix」で、一風堂の豚骨スープをベースに、Oisixの人気野菜や〆の麺がたっぷり楽しめる鍋メニューである。そしてその商品は、なんと発売からわずか4日というスピードで完売!
子育て中でも美味しいラーメンが食べたい。そんなママたちがお家で楽しむ一風堂は、野菜たっぷりのヘルシーなスタイルで、新しいラーメンのカタチをきりひらく。
今回は、共同メニュー開発に携わった、オイシックスドット大地のKit専用セクションマネージャーの森田さん、一風堂等の商品開発を担う、力の源グループ・渡辺製麺の冨田、黒田が商品開発への熱い想いを語った。

※Oisixのミールキットとは

ファシリテーター 関口 照輝(せきぐち てるき) 力の源ホールディングス

オイシックスドット大地とのコラボで
驚きの完売を達成!

関口オイシックスドット大地さんとは、昨年11月末に発売したミールキットの「一風堂監修!野菜たっぷり豚骨スープ鍋」でご縁をいただき、今年は一風堂のヘルシー中華麺とたっぷりのOisixの野菜を組み合わせたミールキットでも共同開発させていただきました。双方の会社のこのメニューの開発に携わったメンバーで、今日はいろんなお話ができればと思っています。
「一風堂監修!野菜たっぷり豚骨スープ鍋」は、なんと4日で完売、第二弾の「一風堂監修!野菜たっぷりベジポタラーメン」は発売初日に完売と聞いて、私たちもうれしい反面すごく驚きました。

森田はい。ありがとうございました。どちらも大変人気の商品で、第二弾のラーメンはおかげさまでオイシックスの歴代商品の中でも異例の売れ行きを記録しました!

森田 佐和子(もりた さわこ)
オイシックスドット大地株式会社 アプリケーションサービス室 Kit専用セクション マネージャー


管理栄養士として病院の勤務を経てオイシックス(現、オイシックスドット大地)ヘ。

https://www.oisixdotdaichi.co.jp/

コラボ第1弾「一風堂監修!野菜たっぷり豚骨スープ鍋」 と、第2弾の「一風堂監修!野菜たっぷりベジポタラーメン」

関口御社は、2017年の10月に大地を守る会と統合されましたね。統合してまだ日が浅いですが、変わったことはありますか?

森田はい。オイシックスは30代のメンバーが非常に多いのですが、大地を守る会は40代、50代のメンバーが多いのが特徴です。今まで触れ合わなかった年齢層が一緒のスペースで働くことで、世代によって変わる食に対しての考え方などが、いい具合に混ぜ合わさって、いろんな世代に対してアプローチできる環境になっていると思います。さらに、今年の2月には同じく有機野菜宅配などを手掛ける「らでぃっしゅぼーや」をグループ化し、さらに会社が変化していくことになりそうです。

冨田 それぞれのいいところがプラスされて、企業として強みが増しているのですね。

冨田 英信(とみた ひでのぶ)
力の源カンパニー商品開発 兼 渡辺製麺 執行役員


大学で管理栄養士を専攻。 調味料メーカーの開発などを経て2014年力の源カンパニーに入社。
※渡辺製麺は、力の源グループとして、麺・スープ・調味料・などの製造・販売を担う会社です。

http://www.watanabeseimen.co.jp/

森田統合して、生産者の思いをより多くの方に伝えていかねばという使命感も強くなりました。多くの方に農業に興味を持っていただくために、N-1サミットという催しも行っているんですよ。N-1サミットの中では、「農家(ノーカー)・オブザイヤー」というアワードもしています。当社の人気野菜をユーザーさんが投票して、上位に挙がった生産者さんを表彰します。生産者の方々にフォーカスを当てることで、野菜や果物にかける想いや、こだわり、ストーリーを伝えることが出来ます。そういったメッセージを伝えることで農業界全体を盛り上げられたらいいなと思っています。
また、社会の背景として、共働きのご家庭が増えて家庭内の女性の家事分担などが問題になっているかと思いますが、そうした各ご家庭に安心安全かつ、手軽に食事を作れるものをご提供することで、ご家庭の負担を軽減させるとか、引いてはその社会問題の解決に繋がっていけばいいかなと思っています。

関口素晴らしい取り組みですね。社内でも何か一緒に企画をすすめるなどの交流はあるのでしょうか?

森田それぞれの混合部署もありますよ。あとはオイシックス時代から続いている、月に1回の社内バーがいい交流になっています。社内のキッチンスペースで、実際に社員がおつまみや料理を作ってお酒を振る舞う会で、月々でテーマが違いますが、そこでも普段仕事で絡まない社員同士も、積極的にコミュニケーションを図っています。

黒田 舞子(くろだ まいこ)
渡辺製麺 商品本部 調味料開発チーム


病院、施設の栄養士を経て、2014年渡辺製麺に入社。

冨田 それは、楽しそうですね。普段、仕事で接点のない人と交流が持てることで、いろんな効果がありそうです。

森田普段の業務で関わらない人と話すきっかけができるのは、地味ながらも大きいです。それこそ、お酒を酌み交わして楽しく盛り上がった人に、後で思い出してちょっと聞いてみたら、仕事がスムーズにいったこともありますよ。役員や代表も来て、フランクに話すことができます。「こういう商品やりたいです」って提案したら、「やってごらん」と言われて実際に商品化されたこともあります。

冨田 直属の上司が「聞いてないよ」みたいなことも起こりうるわけですね(笑) でも自然体の交流がいいですね。

関口我々も、力の源カンパニーや渡辺製麺など、力の源グループとして、よりグループシナジーみたいなものを育んでいくことや部署の横断をしていきたいところで、今のお話はとても参考になりました。

ママと女性のためのラーメンだから
Oisixは女性に人気の一風堂を選びました

関口ところで、今回のキットはなぜラーメンだったのでしょうか?

森田ご協力いただいた「Kit Oisix」は、「Oisix」というブランドの商品で、妊娠中や授乳中のママにご利用いただくことも多いです。お子様のために、ママは体重や栄養のコントロールが必要なのですが、「でもやっぱりラーメンも食べたい」という気持ちもあって、そこに葛藤があるんです。
それで、人気のラーメン店とコラボをして、すごく美味しいけれどヘルシーで、ママたちの葛藤を上手く和らげられるものを作れないかということでアタックをさせてもらいました。冬の時期でしたので、今回のヘルシーラーメンキットと、鍋キット、両方やらせていただきたいというお話をさせてもらったのです。

関口人気のラーメン店はたくさんありますが、その中で一風堂を選んだでいただけた理由はあったのでしょうか?

森田女性に人気だという印象を持っていたからです。ママ向けの商品でしたので、女性目線に特化したラーメンといえば一風堂さんだろうなと。

冨田 オイシックスドット大地の方から、そういうふうに見てもらえるなんて嬉しいですね。一風堂は、まさに創業者の河原が、女性一人でも入れる店を作りたいというところからスタートしているので。

森田やっぱり!お店がおしゃれですし、ザ・男めしというよりもモダンでスタイリッシュなイメージがあって、主観で申し訳ないですけれどそういう印象がありました(笑)。

冨田 ちなみに、今まではどういうミールキットがあったのでしょう?

森田どういう方に向けたメニューにするかでカテゴリー分けをしていまして、例えば有名シェフとコラボをさせてもらっているシェフコラボキットであったり、小さなお子さまにも食べやすいキッズメニューであったり、大人の食卓に向けたデイリーメニューであったり、多様ですね。それ以外にも鍋キットや季節のイベントに合わせたイベントキットっていうものがあったりします。

関口冨田さんは、社内でこの企画にノーとは言わせないぞという意気込みが、最初の段階からあったと聞いていますが?

冨田 最初からすごく乗り気で、自分の中では、社内で絶対にOKをもらえるように頑張ろうと決めていました(笑)。いろいろな企画をいただいてそれに挑戦すること自体が勉強になりますし、そこで良いものができれば、うちとしてももしかしたら新しい業態が生まれてくるかもしれない。いろんな意味でやりがいがあって、すごくありがたいお話だったと思っています。

黒田 女性目線というのが素敵ですよね。さらに今回は、子育てをしているママをターゲットに作らせていただけると聞いて、ぜひやりたい、本当にありがたいなと思いました。

冨田 おしゃれですよね。それとこだわりや安全もといった面も強く感じます。ママや子どもの目線にもきちんと対応しているし、社風として女性が働きやすい環境のように思えました。名刺を交換した方の肩書に「ママセクション」という部署があったのも印象的です。一般の企業ではなかなかそういった名前を付けることもないんじゃないかと思います。

森田「ママセクション」は、ママのお客さま向けに、ママ目線での商品提案をする部署で、実際に多くのママの方が働いています。うちの子はこれだと食べないとか、商品開発担当がモニターのような感じで、まずは自分の子どもに食べてもらうことも多いんですよ。

冨田 それは一番いいですね。だってそこに調査費用をすごくかけている企業も多いじゃないですか。

森田社内のセクションに関係なく、社内のママたちに聞き取り調査に行くことも意外とありますよ。実際、ご本人たちに聞いてしまった方が早いので、「ちょっと5分いいですか」、「昨日の夕飯どうしていました? 」、「どういうことに悩んでいます?」とお話をして、いろんなヒントをいただいて企画に繋げていくことも少なくありません。

外食が難しい子育て中も一風堂のラーメンを!
その気持ちが作り上げたキット

関口今回の経緯といいますか、メニューの開発はどのように進んだのでしょうか?

森田鍋キットのほうで言うと、豚骨味のこってりもあって、だけど野菜もたっぷりで、そのどっちも食べたいという気持ちを叶えることにテーマを置きました。あと、鍋キットは〆のご提案も特徴なので、一風堂さんとコラボの鍋キットなら一風堂のラーメンを使わないわけにはいかないだろうと。であれば、お店の味が再現ができるのも面白いかなと思ってご相談しました。再現するためにキクラゲを入れるとか、いろいろ工夫をして、試食を重ねて社内でもこの味だったらオッケーというところまで持っていけましたね。

黒田 私は、調味料の味の部分を冨田と相談しながら作らせていただきました。新しい商品の味を作るときは召し上がる姿を常に想像しながら作ります。家族で鍋を囲むイメージを大切に、実際にお子さんのいる当社の社員などに聞いて、「どうやったら食べやすいだろうか」、「おうちで鍋をする時の具は何を入れる? 」などいろいろ教えてもらって、そこからイメージを膨らませました。だから、普段作る調味料とまたちょっと違う感覚でしたね。

森田 ありがたいです。一部は原材料に指定をさせてもらったり、急にサンプルくださいとか、本当にいろいろとこちらからのお願いごとが多くてご苦労をかけたかもしれません。それだけ繰り返して調整してくださったのを今お聞きできて、お願いしてよかったと思っています。

黒田 いえいえ、とんでもないです。ちょっと何回か「う~ん」と悩む時期はありましたが、企画自体が楽しかったのでどうにかくじけずにいけました。

冨田 弊社ではお土産なども手掛けているので、どうしても冷蔵庫に入れてどのくらい持つかとか、保存性を高くするところが求められてきました。そこが今回は一番難しかったですね。生鮮食品を扱う御社とはそこが決定的に違うのかもしれません。
去年、一風堂の店舗に置くラーメンペッパーというのを作りまして、それをラーメンに入れるとすごく風味とコクとかが増すんですよ。今後、機会があれば食べてみてください。「なんでこんなに変わるの? 」というぐらい変わっちゃいますから(笑)。実は今回のスープにも、一部にその原材料を黒田がこだわって入れてくれました。

森田そんなすごい調味料が。とても気になります。

黒田 ちょっと入れ過ぎちゃうと、もしかしたら小さいお子さんには好まれないかもしれないので、本当に零点零何パーセントとかで微調整しています。それだけのかすかな量ですが、でも入れると入れないとではまるで違ってきます。

渡辺製麺では、オリジナルのラーメン専用ペッパーや、「おうちでIPPUDOシリーズ」として、 一風堂の味をご家庭でも手軽に作れるラーメンや、ソース等の企画、生産、販売も対応している。

調味料から麺まですべてを力の源で手がけていきたい

関口森田さんが最初に試食した時はどんな感想だったのでしょうか?

森田鍋については、スープが重くないのがとてもいい印象でした。以前、鍋キットの評価が、スープの味にすごく左右されることがあったので。お客さまに作っていただくと、どうしても野菜の水が出過ぎる場合や炒め過ぎると味がブレやすいのですが、スープがしっかりしていると、そのへんのブレが多少あっても美味しくできるんですよね。これなら多分、失敗なく、100人いたら100人にほぼ近い方がこの美味しさを再現してくれるだろうと思えました。
あと、〆のラーメンまでいき着いた時にはすごくテンションが上がっていましたね(笑)。お店の真似をしたいなとか、どれトッピングしようかなというのも楽しくて、お店のものとはもちろん違いますが雰囲気はすごく味わえるので、これならお客さまに喜んでもらえるだろうと確信できました。

黒田 最後まで食べられる味にしたかったですし、実はそこが苦労したとこなのでとてもうれしいです。

冨田 今回のメニューで、弊社が麺から調味料まですべて作れるということを最初から思っていらっしゃいましたか?

森田私個人で言うと、そこまで細かく把握はしていなかったかもしれません。御社とコラボができるという期待感で企画の準備を進めていったところで、麺もお持ちだよねとか、調味料もうちのオリジナルを作ってくださるというので、途中で情報を加えさせてもらう形になりました。
今までいろんな商品を作るにあたって、お客さまにご提示したい安全基準を調整するのに何かと苦労することが多くて。そこは少しハードルが高いなと思っていたのですが、御社は自社で工面する力をお持ちになっているからかすごくスピーディーでした。今回こうして複数の商品を販売できたのも、そういう力をお持ちになっているからなのかなと思いました。

冨田 今回は、弊社としてはそこに新しい可能性を広げていただけたと感謝しています。

森田お客さまの反応も、一風堂さんのお店が近くにない方とか、お子さんがいらっしゃってなかなか外食ができない方とか、お店に行けないけれど、ご自宅で味わえるのがすごく嬉しいという声が特に多かったんですよ。

コラボ第3弾「一風堂監修!さっぱりとんこつ柚子ラーメン」

自分が食べて美味しいと思ったものを
お客さまに届けられるのが企画という仕事

関口お仕事について少し伺わせてください。森田さんの企画というお仕事は、学生も憧れている人が多い職業だと思います。

森田そうですね。一見、華やかに聞こえますが、企画というのはきちんと形にして販売するまでにはとても細かいオペレーションが付いてくるんですよ。いろんなチームの人と一丸となって働くので、そのためには、いろんな調整やたくさんの人とのコミュニケーションが必要になります。

冨田 その分、醍醐味や面白さもありますよね?

森田自分が食べて美味しいと思えるものをお客さまに届けることは、すごくシンプルで分かりやすいやりがいではないでしょうか。また、何かしらの形でお客さまの安心・安全、美味しい食卓や健康をサポートしたいという思いがありますので、そうしたことも醍醐味ですね。

関口冨田さんは、うちに入社する前はどんな仕事をしていたのですか?

冨田 以前は福岡にある調味料メーカーで12年間ずっと開発をやっていました。それから間に1社経験して、力の源に入社しました。力の源を選んだのはもともとラーメンが好きだったのと、以前の調味料メーカーで一風堂のお土産の調味料を手掛けたことがきっかけかもしれませんね。

関口ずっと続けている商品開発という仕事の魅力って何でしょうか?

冨田 やっぱり美味しいものを届けるとか、それを食べてもらって喜んでもらえるということがすごく嬉しいですね。なおかつ、自分が携わった商品が世に出ていくのもモチベーションになります。
商品開発という仕事は時には難しい課題に直面することもありますが、私はいただいた案件が難しいから諦めるというのが嫌いで(笑)。できないと言いたくない。まずやるのは大前提、駄目でもその過程で勉強になると考えていますので、とことんできるところはやり尽くします。

関口黒田さんは、渡辺製麺に入られる前はどんな仕事だったのですか?

黒田 私は栄養士なので、病院や施設で介護食や治療食の調理と献立などを作らせていただく業務に16年程携わってきました。今の渡辺製麺の前の会社は、ご当地カップ麺や、名店シリーズを作っている会社でした。でも採用されてなんと半年で倒産してしまって、一度進路に迷ったのですが、渡辺製麺が元のその会社の場所を買うというお話があってまた復帰できたんです。
最初は教えてくれる人が周りにいなかったので、自分で基礎から学び直して、独学でやっていました。それこそ、業務用スーパーを回って調味料など売っているものを片っ端から買ったり、もう四苦八苦していて。そこに冨田さんがグループに入ってくれたというのを聞いて「基礎から教えてください」ってお願いしたんです。

冨田 調味料って独特なんですよ。学校があるわけでもないし、だからいっぱいいろんなものを食べて、頭に味を叩き込んでいく積み重ねが重要になる、と黒田にもいつも話しています。
コラボメニューは、とりあえず名前貸してあとは全部こっちでやっとくみたいなイメージがあるじゃないですか。でもうちに関してはそうじゃない。全部自分たちで責任持って作るところまでをやるブランドであることを分かっていただければうれしいですね。

関口今後、第4弾も第5弾もできればいいですね。

冨田 はい。一風堂に限らず何かいただければ、そこはご要望に合わせて調味料を作ることもきますし、提案もしていきたいですね。

森田心強いですね。これからもぜひよろしくお願いいたします。

「おうちでIPPUDOシリーズ」はこちらから
http://ec-ippudo.com/

文=岡本ジュン
※所属、役職はインタビュー当時のものです。