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FEATURE

一風堂は、飲食業界という概念をコロリとひっくり返そうとしている。飲食に関わる人すべてが世界で通用するビジネスパーソンになっていく。その世界を目指して、具体的に動き出そうとしているのだ。その要を握るのが2016年に始動した、力の源パートナーズ人財コンサルティンググループだ。

飲食業界に旋風を巻き起こす一風堂のこれからの企みとは?

─人財コンサルティンググループの事の起こりは、社内教育に『7つの習慣』を取り入れたいというところからですよね。それがなぜ、飲食業界全体の教育というところにまで拡大したのでしょうか?

※「7つの習慣」: 1989年にアメリカで出版された書籍。スティーブン・R・コヴィーによって書かれ、世界的なベストセラーとなった。人財教育のプログラムなどに多く使われている。
教育研修プログラム「7つの習慣」とは

我々はまず、飲食業界を“カッコいい職業にする”という志を持っていて、そのためには飲食業界全体のポジションを上げる必要があると確信しています。僕が取り組んでいるのはその第一歩なんです。

そもそも人財教育に意識が向くことになった発端は2年前にアジア・オセアニア事業本部長だった時です。これから海外出店が増える中で「もう一段、拡大路線に乗るためには、人財を育てないといけない、この延長線上に発展はないな」という危機感を持ったんです。

そこで人事をやらせて欲しいと希望して、そこからの提案で、自分がファシリテーターとなって社内の教育に取り入れたいという話をさせてもらいました。

僕は元々、『7つの習慣』が非常に好きでして、自分の人生がもう『7つの習慣』を軸に流れているといってもいいぐらいなんですよ。

一風堂は、アメリカではPANDA EXPRESSを手がけるPANDA RESTAURANT GROUP(以下PRG)をパートナーとして展開しています。PRGはカジュアルチャイニーズの分野において、全米でナンバー1の店舗数を持つ企業です。このPRGがたまたま『7つの習慣』を取り入れていたことも追い風でした。仕事をする上でPRGは本当に素晴らしい企業だと確信していましたので、PRGがやっているなら、うちもやってみようということになったんです。

星﨑 剛士(ほしざき つよし)
力の源パートナーズ 人財コンサルティンググループ


大手レジャー・アミューズメント系企業を経て、米国に渡りMBA(経営学修士)を取得。帰国後、自身でコンサルティング事業を手がけた後、2012年力の源カンパニーに入社。アジア・オセアニア事業本部長、人事本部長を経て2016年から現職に。

─なぜ『7つの習慣』だったのでしょうか?

私が『7つの習慣』を気に入っているのは、原理原則に根差してとてもシンプルだからです。ステップ通りにやっていけば、すごくいいチームができるという確信を持っています。

昨今はHow to本も含め、スキル向上に焦点を当てがちな傾向がありますが、スキルを向上させるだけでなく、うちの会社らしく、人としての器を大きくしていくものを導入したいと思ったときに当てはまったのが『7つの習慣』でした。

また、「いいことだったら社内で閉じるな」という会長の河原からの一言もあって、外食業界全体に導入しようという、事業としての話に発展したんです。そこから今の部署である、人財コンサルティンググループを立ち上げることになりました。

飲食業の一番の強みは、ピークタイムがはっきりしているビジネスモデルだということです。時間軸が1日の中でギュッと詰まっているので、限られた時間帯に多くのお客様がご来店されます。そして、小売業と比べるとお客様の滞在時間が比較的長い。ビジネスモデル上は、ピークタイムには少ない人員で長く滞在しているお客様に満足してもらわなければなりません。そのために効果的なコミュニケーション能力が必要なんです。店内のスタッフ同士でコミュニケーションをしっかり作りあげて、次にお客様としっかりコミュニケーションをとることが大切です。効果的なコミュニケーションを通して、“スタッフもお客様も一体となってよい空気感を創れるか”、そこに良い営業かどうかの分かれ目があります。

僕は、飲食業というのはコミュニケーションとリーダーシップを育成するには非常に長けたビジネスであると捉えています。飲食業は、店舗スタッフがチームとして本当に高いレベルで結束することを要求します。具体的には、スタッフ一人一人が主体性をもって動き、且つアイコンタクト1つで何をしようとしているかお互いが分かるという状態を創ることが要求されるのです。

学生の時に飲食業を経験して、その後起業して突然変異のように大活躍をしている人がいるじゃないですか。僕はその人たちは飲食を経験することで、リーダーシップとコミュニケーションを培ったのだろうと見ています。

ただこれは体系化されていないというか、きちんと可視化されていないので、飲食業の本当の意味での“魅力”が見えにくいのではないでしょうか。

そこに『7つの習慣』というパッケージがあることで、飲食業に関わった人が良いチームを創る習慣を学び、コミュニケーションを上手くとれるようになる。つまり、豊かな人間関係を創るプロセスを学べるのです。そして、飲食業で培ったものを糧にして、自分のやりたい分野で夢を実現できて、仕事や家庭を豊かにすることができるんです。

飲食業を経験した全員に、こうしたスキルをきちんと得てほしいと考えています。豊かな人生を送るには、豊かな人間関係を創ることからだと思います。その一番基礎的なところを学べるのが飲食業というビジネスの魅力です。