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コミュニケーションと行動管理の力を高めたい
本を読み、考え、文章にして、伝えて、行動して改善・成長する。

久保 元志

一風堂山王店

収入を得るためのバイトを続けて一風堂に出会う

久保元志の実家は男兄弟3人の5人家族である。父はパワーショベル等の大型重機の部品を製造する工場を一人で営んでいる。
福岡の柏陵高校を卒業すると久保は、測量技術を学ぶため福岡国土建設専門学校に入学した。学校に通いながら博多駅筑紫口にあるホテルクリオコート博多の居酒屋でホールスタッフとしておよそ5年間アルバイトを続けた。
アルバイトには大学生が多かった。彼らは就職が決まると次々に卒業してゆき、久保はいつまでも同じ環境にいる自分に不安と焦りを感じていた。彼女との結婚も希望しており、社員として父が経営している工場に勤めることにした。 父とはいつも気持ちが噛み合わなかった。父の話も素直に聞けなかった。当時のことを久保は振り返る。
「今から思うととても未熟でした。何を作っているのかも知らず、言われたことをただ作業的にこなしていました。教えてもらえず、自分から知ろうともしませんでした。父もそんな自分に困っていたかもしれません」。
久保は2年半ほど仕事をして父の会社を退職する。そして2009年3月からアサヒビール園博多店でアルバイトを始める。同店では十分なシフトを得られなかったため、同年5月からは一風堂山王店でも勤務することにした。
10時から16時頃まではアサヒビール園で、18時からラストまでは一風堂で働くといったダブルワークを続けることになる。
しかしアサヒビール園でのシフトは不安定だった。4年ほどして一風堂での仕事に絞ることとした。安定的にシフトに入れて収入も上がることが主な理由だった。

代々の店長から多くの大切なことを学ぶ

当時の店長、田中博秋からは一風堂の言葉を学んだ。原典は一風堂心得帖の五十訓である。五十訓に出てくる言葉を通して仕事のやり方を学んでいった。そして〝当たり前の基準を上げろ〟と常に言われ続けた。
「自分の基準は曖昧でした。例えばテーブルを拭くときも、忙しくなると私は妥協してきちんと拭けていませんでした。〝四角いものは四角く〟という教えは、今では大切な行動基準になっています」。
そして一風堂での仕事は面白かったという。
「自分のやりたいようにやらせてもらえました。デシャップの仕事では自分の考えに合わせてセッティングができました。また厨房では多くの学びがありました。厨房ではどういう情報を欲しているのかが分かりました。また、視点が異なるためホール全体の見え方が変わりました。お店全体の動きが少し掴めたように思えました」。
店長が原明弘に変わると新たな学びが始まった。基本的なところは田中と共通するが、〝掃除・挨拶・整理整頓〟は特に徹底して叩き込まれた。そしてラーメン屋とは関係なさそうな勉強が実際の仕事の場面で役に立つことも実感した。特に〝本を読む〟ことは大きな収穫だったという。
さらに今取り組んでいる『7つの習慣』は、久保の物事の見方に大きな変化を与えている。
「『7つの習慣』は一度読んだことがありました。一人で読んだときには分からなかったことが、店舗の仕事に置き換えて実行すると理解できるようになってきました。特に第4〜第6の習慣については、分かるけれど出来ない自分がいました。私は第1〜第3の習慣はできていると思っていました。しかしよくよく考えてみると、第1の習慣の〝主体的である〟が弱いため、人間関係が上手く築けないでいることが見えてきました」。
久保はコミュニケーションが苦手だと言う。分かってはいたが自分で克服しようとはしなかった。自分を分かってもらえる人とだけ接していればいいと思っていた。その方が楽だった。そして自分の中にある原因を探そうとはしなかった。
「原さんからは度々指摘を受けました。そして自分の都合の良いように聞くのではなく、素直に相手の話しに耳を傾ける努力をしています。さらに『PREP方』というコミュニケーションの手法を学びました。結論を最初に言って、次に何故を伝えて、例を上げ、結論に戻る…このプロセスを繰り返しながら人間関係づくりにトライしています」。

くしふる研修で、100%全力参加を学ぶ

久保は2016年9月に、くしふる研修に参加する。くしふるでは、100%全力参加の意味と、目標の立て方および目標管理の方法を学ぶ。そして、スープの取り方と麺づくりも大きな成果となる。
「山王店は工場併設の店舗です。であるにも関わらず、スープ・麺のことはほとんど知りませんでした。くしふる研修に参加して、ラーメン業務の全体がようやく見えてきました」。
久保は自分の課題はコミュニケーションと行動管理にあると感じている。どちらも現時点50点以下だと言う。1年以内にそれぞれ80点以上に高めることを目指している。そのために、本を読むこと、考えること、書くこと、伝えることを自分に課しているそうだ。
力の源の好きなところを上げてもらった。
「成長させてもらえるところが一番です。教育体系がしっかりしています。『7つの習慣』『木鶏会』『くしふる研修』『アルバイトリーダー会議』『セカンド社員勉強会』など、自分が参加できるプログラムもたくさんあります」。
今まで一番感動したことについては。
「くしふるでのオペレーション研修です。往きのバスの中ではみんなバラバラでした。自分も含めて人見知りをする人が多いと感じました。オペレーション研修で、何回もチャレンジする中で、バラバラだったチームがまとまってゆきました。最後は全員が自信を持って100%全力を出し切ったと言えました。そのとき、一人じゃない、チームが支えてくれると感じました」。
今後のビジョンについては。
「アルバイトスタッフをしっかり指導して一体感のあるチームをつくります。そして、人、モノ、お金、情報の管理をきちんと行い、お店のマネジメント力を高めてゆきます。
プライベートでは家族とのコミュニケーションも大切にします。父親としての信念を持って教育に関わってゆきます。原さんから教えて頂いた、森信三先生の3つの教え〝履物を揃える〟〝大きな声で返事をする〟〝挨拶をする〟この3つに取り組んでいます」。
久保はようやく、素直に自分と向き合うことを始めたようだ。そして〝主体的である〟ことの真の意味も見えてきたようだ。チームのそして家族の良き指導者・教育者として、さらなる成長が期待される。