close

大切な気づきを与えてくれた先輩に感謝。
今度は気づきを与えることができる自分になりたい。

小野 祐貴

一風堂博多駅店

大学進学をあきらめ、福岡でフリーターの生活を始める

福島県で生まれた小野祐貴は、3歳になると父の実家がある山口に移った。小野の実家は3代90年続いている米屋である。4代目を継ぐか否かは小野の選択に任されている。
小野は中学3年までの10年間、水泳を続けていた。背泳ぎを得意とし、山口県ではトップ10に入っていた。今まで楽しく熱中していたことは水泳ぐらいだと言う。
高校を卒業すると予備校に通う。勉強には身が入らず2年間フラフラして結局大学進学はあきらめる。父の知人が飲食店を開くというので、その誘いに乗って福岡に出てくる。しかしながら6ヶ月でお店は閉店となる。
小野はフリーターとして飲食の仕事に就く。昼はサブウェイに勤め、夜は居酒屋に入った。月およそ15万円の収入で自活の生活を始める。
そしてタウンワークで一風堂を見つけて、2011年10月17日創業日の翌日、大名本店の夜のシフトに入る。
店長は中山雄太郎。「アルバイトは一つに決めたほうが稼げるよ」とのアドバイスを受けて一風堂一本に絞った。その結果収入はアップした。

何で怒られるのか、全く分からなかった

大名本店には、今野貴美恵と永石知香がいた。小野は永石からは怒られっぱなしであった。
「挨拶がなっていない。声が小さい。整理整頓ができていない。動きが遅い……。」一歩動いたら怒られた。そんなときはいつも今野がフォローしてくれた。 小野は振り返る。「入って半年ぐらいまでは、なんで怒られるのか全く分かりませんでした。なぜ?といつも疑問ばかりでした。」
そんな状況が続く中、2012年8月大名本店で食中毒が発生する。当日小野は厨房に入っていた。「自分が作ったラーメンが原因かもしれない。なんてことをしたんだろうとの思いがつのり怖くなりました」という。
衛生管理の知識もなく、意識も低く、漫然と仕事をこなしていた自分があらわになった。そんな状況のなか翌日から、くしふるの大地の研修が始まった。小野はお店のことが心配で研修どころではなかったという。

自分のために泣いてくれる先輩がいる

年が明け、2013年1月から斉藤純也が新たな店長として大名本店に入る。斉藤は小野に気づきを与えることになる。
「斉藤さんからはとても大切なことを学びました。仕事に対する姿勢、情熱、そしてラーメンに対するこだわりを。そしてお客様に結びつくことは率先して全部やるという姿勢を貫いていました。熱いものは熱く素早く、トッピングの量はきちんと図り、守らないといけないことをきちんと守り、言葉よりも行動で示されて、私は多くを感じ取ることができました。」
小野は同年6月に2回目のくしふるの大地研修に参加する。そして、変わり切れなかった思いを抱き帰路に就く。
「研修への取り組み方、発表する姿勢、本気で取り組めない自分がいました。高校時代からずっとそのような状況でした。熱中していたのは水泳ぐらいでした。」
そんな思いを抱いているとき、今野から言われた。「なんでいつまでも挨拶ができないんだ。永石が泣いていたぞ」と。
小野は衝撃を受けたという。
「泣いてまで思ってくれる人がいることに驚きました。ここで変わらないといけない。ここで働きたい。この人たちのために働きたい。そして社員になりたい。」と。
小野は社員の試験にチャレンジして2016年4月から博多駅店の配属となる。「今から思うと、社員になるまではアルバイト意識が抜けきらなかったですね。大名本店ではアルバイトリーダーの役目も担っていましたが、相手の状況や気持ちを考えることなく指示を押し付けていました。博多駅店に入ってからは、相手の状況を察して、コミュニケーションを取れるようになりました。スタッフ全員と好き嫌いを抜きにして関わっています。」
そんな中で店長の高江洲昌平からは多くの学びを得ているという。
「私は特に数値管理に関してはほとんど何も知りませんでした。高江洲店長は、理論的に分かりやすく教えてくれます。シフトコントロールにしても、人数と売上を比較して適正値を算出します。発注業務に抜けがあったときも、その原因を一緒に考え対処策を導いてくれます。きちんとした根拠を示されますので、納得して理解できます。数値管理をはじめ、論理的な組み立ては私の苦手なところであり課題なので、大きな学びとなっています。」

いつも人のせいにして逃げている自分がいた

小野は社員を志したときのことを振り返る。高校を卒業してからはいつも目の前のことから逃げていた。逃げるのに慣れていてその方が楽だった。うまくいなかない責任は他にあると考え人のせいにしていた。そしていつも斜に構えてくさっていた。どこに本質的な原因があるのか……。
「小学校6年生のときに大好きだった母を亡くしました。父は金遣いが荒く、家に居なくていつも外で遊んでいました。母に迷惑ばかりかけていました。そんな父が大嫌いでした。それから他の人のことを好きになれませんでした。でも永石さんに出会って、自分の負の根っこに気付かせてもらいました。そして、自分で生きていかなければならないと決意しました。それが社員を志した理由です。」

力の源の人たちと一緒に成長したい

小野は料理の勉強を深めてゆきたいと言う。
「出汁、スープ、麺、ラーメンに関する勉強をもっと深く掘り下げたいですね。ラーメンのことが全部分かる店長になって活気あるお店をつくってゆきます。飲食の仕事は、自分が行動したことがすぐリアクションとして返ってきます。お客さんに喜んでいただけたときは、とても嬉しくてやりがいを感じます。この仕事を追求していきます。」
小野は力の源に入って自分が変わったと感じている。気づきを与えてくれた人と出会えて、この会社に入って良かったと感謝している。力の源は人が成長する場である。力の源の人たちと一緒に成長して、今度は何かを示せる人間になりたいと新たなステージを目指している。