FEATURE
- CROSS TALK #05
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- 想像力を羽ばたかせれば
- オンリーワンのサービスができる
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- ANA×力の源ホールディングス
4おもてなしの姿勢・仕事の魅力
最上のサービスは、想像して実践していくということ
関口最後にサービス業としてのおもてなしの姿勢や、仕事の魅力について教えてください
山本それはやっぱり、お客様から笑顔をいただけたとき、ありがとうと言っていただけた時です。やっていて良かったな、人の役に立てたんだという瞬間を積んでいくことに達成感があると思います。
おもてなしということでいえば、よくジャパンクオリティと言われますが、外国の方からは自分たちでは気づかない点を評価されているところもありますよね。そこにももっと目を向けて、強化していくことの大切さを実感しています。例えば、サービス前に全員で一礼しますが、全員がきちっと揃ったときには“素晴らしい”という評価をいただけます。その一礼が、お客さまにとって安心感や信頼できる印象を与えるものであり、ひいてはブランドの価値につながっているんです。
関口最近はダイバーシティ※という言葉がよく使われますが、客室乗務員には外国のスタッフも多いでしょうし、御社はその経験値が高い企業だと思っています。一風堂もこれからは取り入れたい分野ですので、その辺のお話をお聞かせください。
※ ダイバーシティ(Diversity): 「多様性」。企業経営においては人材と働き方の多様化のこと。
山本日本人は同じ価値観をみんなが持っているという強みがあって、細かく説明されなくとも、「こういう意味で言われたのかな」と推察して行動することができるんですね。一方で外国の方は、自分が納得できない時にはたくさん質問してきます。そこで理論をもって相手を説得する必要が出てきます。「なぜそれをやるのか」などの意味や背景などの伝える力は、彼らが入ってきたことによってついてきていると思います。
今だから言えますが、私たち客室担当は最初、日本人だけでやっていきたいという気持ちが強くありました。だから「英語をもっと頑張ります、あとは英語の問題だけですよね!」と思っていました。でも実は英語の問題ではなくて、外国の方を同じチームメンバーとして迎え入れる、その方法を学んでいくことが企業としての強い組織を作り出すことになっていくんです。
また、外国の方のサービスに学ぶところも多いと思います。日本人は決まったお声がけは得意なのですが、きちんとやろうとするあまり表情が強張ってしまうことがあるんです。ところが外国の方はご自身もサービスすることを楽しんでいる。それは海外のレストランへ行くとよくわかりますね。サービスの仕方やしぐさ、お客様におすすめするタイミング、言葉かけには全然違うものがあり、いつも勉強しています。
鈴木海外のエアラインの客室乗務員はプラス思考で楽しんでいるよね。でもそのほうが絶対に気持ちが伝わりますよね。
山本本当にそうです。状況は刻々と変化しますので、その場に応じて判断できる力が必要ですね。一人一人がそれをできるようになればすごく強いサービスになっていくと思います。
ANAのテーマは『あんしん、あったか、あかるく元気』。決して超一流じゃないけれども、超一流を目指して、失敗を繰り返しながらも努力し続け果敢にチャレンジするというのが強さだと思います。今までもこれからもそのDNAを残していきたいなと思いますね。
関口そういう意味では、日本航空との大きな違いってあるのでしょうか?
山本まさに、超一流じゃないってところですよ(笑)
関口海外でも高く評価されるANAのサービスは、すでに完成に近いと思っていましたが、そこをさらに良くしようという満足度のレベルというか、当たり前の基準値の高さに驚きました。
山本サービスについても例えば、あるお客様が「替え玉、バリカタでよろしく」なんて機内で言われたときに、「申し訳ありません、できかねます」ではなくて、「がんばってみます!」と答えればそこに会話が生まれるんです。お客様も本当にバリカタを求めているのではなくて、そういう会話ができることで気持ちよく過ごしていただけるし、「替え玉はできませんが、2杯目はいかがですか?」って言える人財を育てていきたいですね。
鈴木一風堂が目指すところも同じです。“目配り、気配り、心配り”ができる人財を育てること。お客さまに求められることを、経験から判断して行動し、お客さまの期待を越える感動を生み出せたら素晴らしいですよね。マニュアルでは伝えることができない、人の心を読む力。それが一風堂の「おもてなし」の源です。
山本マニュアルに基づいたオペレーションは、これはもうミニマムレベル。それでは差別化にならないので、サービスマンはクリエーターになっていかなくてはと思います。そうなるには、先ほど言ったように安全を絶対に守るという原理原則を分かった上で、クリエイティブに発想して一歩踏み出すこと、それができればナンバーワンになれるでしょうし、オンリーワンにもなれます。私が考える最上のサービスとは、想像して実践するということです。
撮影=原智彦、文=岡本ジュン
※所属、役職はインタビュー当時のものです。